そもそも、なぜ労災には適切な社会的支援が必要と考えているのか、ひいてはこのようなホームページを立ち上げているのか、といったことを少し書いておきたいと思います。
そもそも、過労死や過労自殺などのご遺族、労災事故に遭われて休職をしたり退職せざるを得なくなった方々、パワハラ被害などに遭われた方々、このような方々は多くの場合、職場、いや社会で「孤立」した環境に置かれてしまっているケースが非常に多いと考えています。
誰にも相談できず、会社から適切な補償を受けようにもどこに支援を求めてよいのか分からない、また、労基署に相談をしても対応をしてくれない・・・・
なぜ大切な家族が亡くなったのか、実態をできる限り解明したいと思うけれど、会社に調査を求めても真実かどうかも分からない、むしろ何か大切なことが隠されている気がする、疑問を感じてモヤモヤしているが親族に相談しても会社と対立するようなことは止めるよう忠告される。
このような状況で、多くの労働者やご遺族は、適切な情報を得られないままに、社会的に個人として「孤立」していきます。
ここで、ある精神科医は次のことを指摘しています
「社会的支援ほどストレスのレベルに影響を与える要因はほかにない」
「孤立はすべての精神的ストレッサーの中で最も破壊的なものの1つ」
引用:臨床精神医学講座5・神経症性障害・ストレス関連障害・415頁
よく自殺予防対策の標語として、「孤立を防ぐ」ということが言われますが、メンタルヘルスや労災の予防・補償の場面でも全く同じことが当てはまると考えています。
「孤立を防ぐ」
そのために、弁護士が、問題解決のための有効かつ強力な社会的資源として、労災に関する専門的な知識を用いた適切な社会的支援を行う。
このことが、労災補償の支援を行う大きな目的の一つです。
上記の精神科医は次のことも指摘しています。
「患者に対する共感や配慮といった情緒的支援はいうまでもなく、その患者の負担を物理的精神的に肩代わりしたり、適切な対処に関する情報を与えたり、さらには患者の自己評価を適正化する情報を与えたりすることにより、その患者の最も自然的な治癒能力は賦活される」
引用:臨床精神医学講座5・神経症性障害・ストレス関連障害・415頁
つまり、適切な支援が与えられることによって、その人自身の生きる力もまた再生されるということです。
上記記述は精神疾患の患者を念頭に置いたものですが、精神疾患を発症するというところまでいっていなくとも、労災被害に遭われた方々に労災補償に対する適切な対処を支援することで負担を軽減し、労災によって弱ってしまった社会的に生きる力を賦活する手助けをしたい、そう考えています。
そのためには、社会的あるいは精神的に個人として「孤立」している方にきちんと届くような内容にしなければと考えているのですが、日々の事件の忙しさにかまけて、ホームページの立ち上げ以来、全く更新をせずにきました。最近は、これではいけないな、と痛感しています。
今後は可能な限り、このHPでも適切な情報を発信していければ、と思っています。